今回は国庫帰属制度を利用して土地を国庫に帰属させるために必要な内容を大まかにまとめてみました。

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◆国庫帰属に申請ができる人

・申請ができるのは、相続や遺贈によ り土地の所有権を取得した相続人となります。

 *遺贈については、相続人に対する遺贈に限られます。

 ・ 相続登記によって申請者が所有権登記名義人となっている場合には、申請書 に相続人であることを証する書面を添付する必要はありません。

*相続登記がされていない場合であっても申請ができますが、その場合には、申請書に相続人 であることを証する書面を添付する必要があります。

 ・土地が共有地である場合には、相続や遺贈によって持分を取得した相続人を含む共有者全員で申請する必要があります。

 *この場合、他の共有者については、相続以外の原因により持分を取得した場合であっても申請することができます。

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◆国庫帰属の申請ができない土地があります。申請した段階で直ちに却下となる土地の例は以下の通りです。

・建物が建っている土地

・土地に抵当権などの担保権、または使用収益を目的とする権利が設定されている場合

・土地の所有者以外の人が使っている、今後も使うと予定されている土地

   通路として利用されている土地

   墓地内の土地

   境内地

   水道用地として利用されている土地

   かんがい用又は悪水はいせつ用の水路 として現在使用されている土地

   水を貯え取水ができるよう、人工的に造成された池として現在使用されている土地

・土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地

・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

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◆申請後の審査の段階で不承認となる土地については以下の通りです。

 

・勾配30度以上+高さ5メー トル以上に該当する崖がある土地であって、周囲の住民に被害を及ぼしたり、隣地に土砂が流れ込むことによって被害を及ぼす可能性があり、擁壁工事等を実施する必要があると客観的に認められるような場合。

・工作物、車両又は樹木その他の有体物が存する土地であったり、その有体物が土地の通常の管理又は処分を阻害する場合には不承認となります。その有体物とは以下のようなものが挙げられます。

  果樹園の樹木

  放置すると倒木のおそれがある枯れた樹木や、枝の落下等 による災害を防止するために定   期的な伐採を行う必要がある樹木

 ・放置すると周辺の土地に侵入するおそれや森林の公益的機能の発揮に支障を生じるおそれがあ るために定期的な伐採を行う必要がある竹

・過去に治山事業等で施工した工作物のうち、補修等が必要なもの

・建物には該当しない廃屋 ・放置車両 など

・産業廃棄物 ・屋根瓦などの建築資材・地下にある既存建物の基礎部分やコンクリート片 ・古い水道管・浄化槽・井戸・大きな石 など、除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができな い有体物が地下に存する土地についても、帰属の承認をす ることができません。

・通行が現に妨げられている土地については、帰属の承認をすることができません。例えば「他の土地に囲まれて公道に 通じない土地(袋地)」「池沼、河川、水路、海を通らなければ公道に出ることができな い土地」「崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地」です。

・申請地に不法占拠者がいる場合 、隣地から生活排水等が定期的に流入し続けており土地の使用に支障が生じている場合、別荘地管理組合から国庫帰属後に管理費用を請求されるなどのトラブルが発生する可能性が高い場合、立木を第三者に販売する契約を締結している場合など、土地の所有者以外の人や環境による阻害が考えられる土地も帰属の承認が下りません。

・土地に生息する動物(スズメバチ、ヒグマ、病害虫)により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地も帰属の承認がありない場合があります。「鳥獣、病害虫その他の動物が生息する土地 」と「動物により当該土地又はその周辺の土 地に存する人の生命若しくは身体、農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある土地」に該当する場合は承認不可です。

・国による整備(造林、間伐、保育)が必要な森林または山林については、承認不可となる場合があります。

・国庫に帰属した後、国が土地の管理に要する費用以外に、別の金銭債務を負担する土地は承認できません。国庫帰属させたい土地が、土地改良事業の施行に係る地域内の土地である場合はよく確認することが必要です。

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◆かかる費用について

・申請時に必要な手数料は「14,000円」です。

・面積にかかわらず、原則「20万円」必要です。

・申請地の登記記録に記載されている「地目」によって費用が変わってきます。地目が「宅地」「田・畑」「森林」の場合だと土地の面積で費用が変わってきます。あくまで例えばになりますが、宅地の場合だと50㎡で41万1千円、200㎡で79万3千円です。1000㎡だと「248万9千円」となrいます。

・「雑種地」や「原野」は面積にかかわらず「20万円」です。

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私の印象としては、国庫に帰属させることができない土地が思った以上に多いですね。帰属の承認ができない土地って、現在所有者不明土地になっていそうな土地だなぁ…と思いながら記事を書いていました。申請書の作成も専門家じゃないと難しいのでは…とも感じました。

あと国庫帰属に係る費用も最低20万円からで、地目で大きく変わるものの、数十万、数百万とかかります。国庫に帰属させたくても費用が負担できない人が多く、結局放置して所有者不明土地になってしまいそうな気がしてなりません。

まだ始まったばかりの制度なので、今後もっと使いやすい制度になってくれればいいですね。